ねぶた囃子は祭りに欠かせない存在
青森ねぶた祭といえば美しく力強いねぶた本体に注目が集まりがちですが、その魅力を引き立てるのが「囃子」の存在です。
「囃子」という文字は、見たことがない方もいらっしゃるかもしれません。
これは「はやし」と読みます。
「ねぶた囃子」とする場合は「ねぶたばやし」と読みます。
本記事では、ねぶた囃子で使用される楽器や囃子の種類、囃子賞、さらには囃子を実際に体験できる方法まで、徹底解説していきます。
ねぶた祭をより深く楽しむためのヒントが詰まった内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください!
ねぶた囃子とは?
そもそも「囃子」というのは、日本舞踊や歌舞伎、寄席、落語、祭りなどの伝統芸能で用いられる音楽のことを指します。
つまり「ねぶた囃子」というのはねぶた祭で奏でられる音楽のことを指します。
ねぶた囃子を演奏する人たちは「囃子方(はやしかた)」と呼ばれます。
バックバンドのようなイメージですね。
各ねぶた団体にそれぞれの囃子方があります。
少し細かい話ですが、ねぶたの団体から囃子の団体は独立しています。
令和6年度にねぶた大賞を受賞したのは「あおもり市民ねぶた実行委員会」ですが、その囃子方として「あおもり市民ねぶた実行委員会囃子方」がある、というような感じです。
かといって運行団体と分断されているかというとそうではなく、何かしらの関係性があり、本番前も本番中もねぶた本体のスタッフとコミュニケーションを取りながら運行していきます。
ねぶた囃子の役割
ねぶた囃子は、単に音楽として楽しむだけではなく、祭りを円滑に進行させるための重要な役割を果たしています。
囃子のリズムに合わせて、跳人(ハネト)と呼ばれる踊り手たちが飛び跳ね、観客にも高揚感を与えるため、ねぶた祭には欠かせない存在です。
自由参加はできない
青森ねぶた祭では、ハネトが自由参加できる一方で、囃子は当日自由に参加できるというものではありません。
囃子に興味がある方は、事前に囃子方に参加しておく必要があります。
ちなみにですが、囃子方は日常的に練習を重ね、技術向上と伝承に力を入れています。
青森市民でも知らない方もいるのですが、ねぶた祭が8月に終わると、囃子方は9月ごろから練習を始めています。
秋冬は屋内で練習しているのであまり知られていませんが、「ねぶた馬鹿」(褒め言葉です)たちは来年のねぶたに向けて備えているのです。
年が明けて雪が溶け、暖かくなってくると、外で練習をする団体が増えてきます。
外での練習風景は自由に見ることができますので、6〜7月の夕方の青森市で音色を聞いてみてください。
囃子を奏でる3つの楽器

楽器の種類
ねぶた囃子の楽器は、「太鼓」「笛」「鉦(かね)」の3種類です。
これらの楽器がリズムとメロディーを織りなすことで、ねぶた祭特有の熱気と躍動感を生み出しています。
笛:メロディー担当
囃子のメロディーを担うのが「笛」です。
ねぶた囃子には「篠笛(しのぶえ)」が使われており、高音が響き渡る美しい音色が特徴です。
安価なものは数千円で購入することができます。
漆塗りになっているものは数万円と高価で、見た目もさまざまです。
津軽塗りの笛もありますし、派手な蛍光色のものもあります。
笛吹きたちのこだわりに注目してみてください!
太鼓:祭りのリズムをつくる重低音
ねぶたが近づいてくると、まず遠くから「ドーンドーン…」と聞こえてくるのが「太鼓」です。
太鼓は各囃子方で太鼓の台車を所有していて、そこに大きな太鼓を詰んだ状態で叩きます。
昔は「担ぎ(かつぎ)太鼓」と言って、肩に太鼓をかける形で叩いていました。
今も台車の太鼓と別に、囃子方によっては担ぎ太鼓を叩く人を何人か配置しています。
大きな太鼓の力強い音と、担ぎ太鼓の少し「ポンポンポン…」という丸みのある音。
どちらも味わってみてください。
鉦:リズムのアクセントを担う
「カン、カン」と高く響く音色を持つ「鉦(かね)」は、囃子の盛り上げ担当を担っています。
「手振り鉦(てぶりがね)」や「手振り」とも呼びます。
鉦の方は観客の方を見て演奏してくれる上、「ラッセラーラッセラー」と笑顔でかけ声をかけてくれます。
そのダイナミックな動きと、房(ふさ)がシャラシャラと動く美しさを楽しんでください!
聞き分けられればねぶたマスター!?囃子の種類
「ラッセラー」のかけ声に合わせて演奏される囃子が最もポピュラーですが、実はこれ以外にもさまざまな囃子があります。
進行と戻りの囃子に関しては、青森ねぶた祭公式サイトで聞くことができます。
事前に予習するもよし、祭りが終わってから余韻に浸るのもよしです!
進行
まず、ねぶた運行中の囃子を「進行」と呼びます。
「ラッセラー」のかけ声とともに演奏されます。
祭り開始の花火があがり、終了の花火があがるまで演奏は続きます。
戻り
祭り終了の花火があがると、ねぶたは帰路につき始めます。
このときに演奏されるのが「戻り」と呼ばれる囃子です。
「ねぶたのもどりコ」とかけ声をかけます。
「〜コ」と呼ぶのは青森をはじめ東北でよく見られます。
例えば青森では飴のことは「あめっこ」と言いますし、牛のことは「べごっこ」と呼びます。
ちなみにですが男の子のアソコの部分をおばあちゃん世代の方は「はとっこ」、さらに訛って「はどっこ」と呼びます。
なぜ鳩なのかはわかりません。
昔の人には鳩に見えたんでしょうね…。
話は戻りますが、「ねぶたのもどりコ」のかけ声も、ぜひ一緒に沿道からかけてあげてください。
津軽弁を効かせて「ねぇんぶたの〜もんどりコォ〜」と言えるようになると、ツウです。
集合
出発の時間が近づくと演奏される太鼓です。
祭り開始の花火があがる前後に演奏されます。
急に大きな音が鳴るのでびっくりするかもしれませんが、素晴らしい迫力ですので、祭り開始前から沿道にいる方は見てみてください。
ころばし
ハネトのボルテージをあげるための囃子です。
太鼓と鉦が、進行と異なって跳ねるようなリズムになるのが特徴的です。
運行前に集合→ころばし→進行の順で演奏されることが多いので、こちらも聞き分けてみてください。
七日日(なぬかび)
8月7日に演奏される特別な囃子です。
といっても7日の運行中も、基本的には進行を演奏します。
囃子方によって「この道路は七日日を演奏しよう」とか、運行の最初や最後だけ演奏したりと決められていますので、どこで聞けるかは運次第です。
進行とは異なり、ねぶたが終わりに近づいていくしっとりとした囃子になっていて味わい深いです。
今は聞けない囃子
昔は演奏されていましたが、今は聞けなくなってしまった囃子もあります。
- 運行の知らせ:戦前までは合同運行ではなかったため、「今日運行しますよ〜」というお知らせのために演奏されていた囃子。
- ねぶたを回す囃子:特定の場所でねぶたを回すときに演奏されていた囃子。
また、今の進行囃子は7節(せつ)のメロディーをずっと繰り返し演奏しますが、昔は50節ほどもあり、覚えるのが大変だったようです。
それがわかりやすくなるようにまとめられ、各流派ごと独自の囃子が演奏されるなどありつつ、今の囃子のかたちに整えられたようです。
囃子にも賞がある
囃子賞にも注目を
ねぶたといえば「ねぶた大賞」が注目されがちですが、実は「囃子賞」というものもあります。
これはもっとも優れた囃子方におくられる賞であり、ねぶた本体とはまた別に審査されます。
青森ねぶた祭公式サイトによると、以下のような基準で囃子は審査されています。
- 音色・旋律
- 旋律の調和、躍動性
- リズム、テンポ、強弱
- ねぶたとの一体感
- 囃子方
- 服装や態度、演出
8年連続囃子賞受賞団体
2024年のねぶた祭で囃子賞を受賞したのは、日立連合ねぶた委員会所属の青森ねぶた凱立会(がいりゅうかい)です。
凱立会はこの受賞で8年連続、15回目の受賞と、圧倒的な強さです。
オレンジの半纏で力強く演奏される凱立会のパフォーマンスを、沿道で体感しましょう。
凱立会の演奏は日立のサイトでも聞くことができます。
囃子体験のススメ

ねぶた囃子を体験する魅力
ねぶた囃子を実際に体験してみると、その力強さや一体感に感動を覚えます。
観客として聞く囃子も素晴らしいですが、自ら楽器を手に取りリズムを奏でることで、祭りの熱気をより一層感じ取ることができます。
青森の文化や伝統を肌で感じる貴重な機会として、囃子体験は地元の人々だけでなく観光客にも人気です。
体験できる場所
ねぶた囃子は青森駅前にあるねぶたの家 ワ・ラッセで体験することができます。
太鼓または鉦を叩いてみることができます。
- 1日4回開催。
- 場所はねぶたホール(有料ゾーン)なので、チケットを買って入場する。体験のための費用はかからない。
- 平日はワ・ラッセスタッフによる演奏をしているが、連休などの時期は囃子団体を呼ぶこともあるため、ワ・ラッセの公式サイトをチェック!
初めてこういった楽器に触れる方は「思ったよりもむずかしい…!」と感じるかもしれません。
慣れないと音がしっかり出なかったり、リズムを取れなかったり、手をぶつけてしまうこともあります。
ちなみに笛の体験はできません。
衛生的な問題もありますし、笛の音が出るまでには時間がかかります。
1週間ぐらいで音を出せるようになる人もいれば、数ヶ月かかる人もいますが、初めて笛を吹く人が綺麗な音を出し続けることはほぼありません。
実際に体験してみるとその演奏のむずかしさがわかって、さらにねぶた祭を楽しめると思います。
日中にワ・ラッセで囃子体験をした上で、夜の本番を見ていただくという流れをおすすめします!
囃子からねぶた愛を感じて
以上、青森ねぶた祭の囃子について、その楽しみ方をまとめました。
囃子方にはねぶたを愛する「ねぶたバカ」がたくさん所属しています。
ねぶた期間のたった1週間のために、1年間練習しているんです。
すごい熱量ですよね。
魂のこもった各団体の囃子を、ねぶた祭で感じてください!
©︎カメラマン:角間拓也
